原発ゼロへ

「チームゼロネット」は、 2012年12月の脱原発世界会議2をきっかけに 新規立地計画をかかえる上関と大間、 そして原発が唯一稼働している大飯にフォーカスして 原発ゼロの未来を目指しひろく連携する有志のチームです。 それぞれの現地の状況に即した情報発信やアクションの呼びかけを目指します。 拡散にご協力くださるとありがたいです。

どうなる祝島沖・上関原発(『週刊金曜日』978号より転載)

上関町議選に山口県知事選、漁業補償金問題…
どうなる祝島沖・上関原発

山口県祝島沖に中国電力による上関原発建設が計画されてから
30年以上も反対運動を続け、建設を許さなかった祝島の人々。
この2月は、祝島の行く末を左右する選挙が続く。

◆中国電力の上関原発計画に抗い続ける山口・祝島。
東京電力の福島第一原発事故後も建設は明確に中止にならず、闘いは続いている。
この2月は、祝島の人びとにとって重要な選挙が重なる。

2013年10月末に入院した山本繁太郎知事の辞任で、
2月23日には山口県知事選挙の投開票となった。
上関原発のための公有水面埋立免許(免許)は「延長を認められない」と
12年夏の県知事選挙で公約しながら、失効をずるずると1年半先送りした知事だ。
免許の行方を左右する選挙になるだろう。

報道によれば、元総務省財政課財政企画官の村岡嗣政氏が、
自民・公明両党の推薦を受け無所属で立候補表明。
前政権の原発ゼロ政策を「ゼロベースで見直す」安倍晋三首相が地元の山口県知事選で負けられないと、
自民党は引き締めを図ったと伝えられた。周南市の前市議で共産党県委員の藤井直子氏も立候補という。
前回立候補した元衆院議員の高邑勉氏とNPO法人「環境エネルギー政策研究所」飯田哲也所長は
一本化を模索と報じられ、飯田所長が立候補を見送った。

◆定数削減の町議会選挙で反原発派の票割れの危険
上関町も、2月11日告示、16日投開票の町議会議員選挙が控えている。
上関原発の準備工事は東京電力の福島第一原発事故を受け「一時中断」のまま。
非暴力で工事に抗い続けた予定地対岸の祝島や周辺の住民をはじめ、
多くの人が原発計画の行方に関わる町議選を注視する。
定数が12人から10人に減る今回、原発誘致を謳う7~8人と、
原発なしをいう3~4人が立候補を予定。

祝島では、上関原発を建てさせない祝島島民の会の代表で現職の清水敏保さんに加え、
同会元代表で元職の山戸貞夫さんも立候補予定だ。

原発を拒む議員は現状でも3人。島人の約9割が原発を拒むとはいえ、
30年前に1000人以上だった祝島の人口は500人を切った。
今回、祝島の票だけで2人当選させることは容易ではない。

ただ、祝島の人が気を揉むのは、むしろ漁業補償金の問題だろう。
上関原発建設に伴う補償金の受取りを拒み続けてきた山口県漁協(県漁協)祝島支店は
12年2月、受取り拒否に加え「二度と協議しない」と決議し、終止符を打った。

県漁協はしかし、議決権があり拒否を貫いた正組合員が引退や死亡で10人程減った昨年2月28日、
祝島支店の総会の部会を開催して「祝島支店が補償金受取りを決議」と発表したのだ。

「この決議は規約違反」と清水代表は言う。
議長は、出席した組合員が相談して選出方法を決め選出すべきところ(規約8条と19条)、
県漁協本店の理事が組合員の協議を封じ、
祝島で慣習的な挙手でなく島人が不慣れな投票で選出したからである。

経験上、採決方法は結果に影響する。
採決方法の決定権をもつ議長の選出は、選出方法について決を採るほど重要な争点なのである。
原発を容認する立場の祝島支店運営委員長が県漁協の主導で初めて議長に就き、
補償金受取り賛成の声が拒む声を上回ったとしても、規約違反である以上は無効ではないか。
運営委員長は、原発を拒む漁師が工事の現場で連日抗議を余儀なくされて
立候補の届け出ができなかった数年前から、原発を容認する組合員が就いている。

昨年3月、祝島支店の39名の組合員(正組合員53人中31人+准組合員8人)は
「受取り拒否」を改めて書面で表明。岡本正昭・副運営委員長が代表して県漁協へ提出した。
同じ趣旨を別途申し入れた山戸さんと合わせ、今も40人の組合員が受取りを拒むが県漁協はそれを無視。
補償金配分案を作成し、説明と採決のため祝島支店の総会の部会を開こうとしては、混乱を生んでいる。

◆「補償金を受取ることは原発を認めるということ」
「受取り拒否」の組合員に対しては、かつての同級生や親戚が電話や訪問で宥めすかしたり、
島外からも揺さぶりが続いていたりする。

「補償金を受取っても原発はもう建たん」「補償金は漁業者の権利だから貰うなとは言われん」
「原発計画に翻弄されてきたじゃないか」等の言葉も聞こえる。
歳を重ねていくうえに不況下で人口減、先の見えない状態の人たちにとって、
補償金を前に揺れる気持ちも理解できなくはない。
「県漁協のせいで祝島の者が対立しあうことになっとる」と嘆く漁師もいた。

それでも、原発計画がなくなってない以上、原発を認める金は受取れん、という声は根強い。
事実、補償金の根拠である漁業補償契約書の第1条には、
四代漁協・上関漁協・共第107号共同漁業権管理委員会(管理委)
および所属組合員は(原子力)発電所の建設及び運転に同意する、とある。
「祝島漁協が補償金を受取らずにきたから、中電が海を埋め立てようとしても命がけで反対できた」(清水さん)のだ。

原発計画で長年苦労した人に一種の慰謝料で報いる道があってもいい、という声は説得力もある。
だが、島人の約8人に1人にすぎない漁師に限定した補償金は、その意図に適さない。
祝島では漁師も漁師でない者も、長年ともに一心に原発を押し戻してきたのだ。
たとえば、2010年1月から毎日交代で予定地・田ノ浦へ通い建設を拒んだ女性中心の島人の多くは漁師ではない。
それを顧みない論理は、島人に新たな分断をもたらすのではないか。

「補償金は漁師の問題かしれんけど、それを受取った“結果”は漁師だけの問題じゃないよねぇ」(70代女性)との声も聞く。

今年1月30日、「補償金の話はナシ」とことわりを入れ、祝島支店は決算報告のため集会を開いた。
2月開催が恒例だが、ダブル選挙で時間が割かれるために前倒ししたのだろうか。
結局、この集会は報告のみで終わり混乱はなかった。
しかし、「受取り拒否」を貫く漁師たちの警戒は続く。そして島人たちの闘いも続く。(山秋真)

(了承を得て『週刊金曜日』978号より転載)